2Bの鉛筆と、墨を磨るという”遠回り”
小学生の娘は、鉛筆を卒業し、シャーペン使いになった。
文房具の予備箱をのぞくと、使われずに残っていた2B鉛筆が何本かある。
もうペンで書くことしかない生活だけれど、
なんとなく削って、使ってみた。
──書き心地が、いい。
紙に触れる感覚がやわらかくて、
線に少しだけ、体重が乗る感じがする。
それは、便利さとは違う「手応え」だった。
書道でも、同じことが起きている。
墨汁なら、ボトルをひねればすぐに書ける。
でも私は、固形墨を硯で磨る。
水を落とし、静かに墨を動かし、
その日の濃さを、手の感覚でつくる。
師範クラスの方に、
「それ、感心するわ」と言われたことがある。
実はこれ、面倒くさがりな自分のための心理作戦でもある。
時間をかけて作った墨液だから、
「まぁ今日はいいか」とは、なりにくい。
ご存じない方も多いかもしれないが、墨を磨ってできた墨液は保存料が入った墨汁と違い、日持ちしない。
だから、磨りあがったら、使い切るしかない。という、もったいない精神も働く。
集中力は、気合ではなく準備の質で決まる。
そう気づいてから、紙を無駄にせず、条幅2枚(掛け軸のようなサイズ感の紙)、納得のいく作品が仕上がるようになった。
引き算の考え方は、
「楽をするために省くこと」ではない。
むしろ、
- 何を減らすか
- 何は、あえて残すか
その見極めです。
簡略化しすぎると、続かなくなることがある。
価値ある行為ほど、
“わざわざ”が、支えになることもある。
2Bの鉛筆も、墨を磨る時間も、
効率はよくない。
でも、どうも”怠け”が出てしまうこを、続けるためには、ちょうどいい。
引き算とは、
自分が集中できる条件を、整えることなのだと思う。
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